大きな口は災いの元

プロの歌手たちは大きな口を開けて、気持ちよさそうに歌っていますよね。
そんな映像を見ると、自分も同じように思い切り歌ってみたい!と思うでしょう。
しかしプロの歌手たちは、大きな口を開けているから素敵な演奏ができるわけではないのです。

見た目だけ真似しても、パワフルでかっこいい歌は歌えません。
それどころか、大きな口を開けようとすると、のどに良くないことが起こり始めます。
今回は「大きな口を開けて歌う」ことをテーマにお伝えします。

大きいものを動かすにはエネルギーがいる

自転車より車。車より電車。電車より飛行機。
大きなものを動かすには、より多くのエネルギーを必要とします。
歌にもその法則は当てはまるのです。歌のエネルギーは息です。
口の開きが大きいということは、出口が大きいということ。つまり燃費が悪いんですね。
燃費の悪い大きな口で歌おうとすれば、それだけたくさんの息が必要になります。

訓練されていない人がたくさん息を使おうとすると、のどを締め付けたり力んでしまったりと、のどにとって良くない状態に陥りやすいのです。
プロの歌手たちは訓練されているので、大きな口でも歌うことができます。

小さい方が扱いやすい

大きな口の開きで上手に歌えないなら、小さい口の開きで歌えば良いのです。
口の開きを小さくして練習をすると、体の状態を把握しやすくなります。
狭い範囲に集中して意識を向けることができるからです。
そうして、少しずつ使える範囲を広くしていきます。
最初は物足りないかもしれませんが、小さな口で歌えると表現の幅も広がりますよ。

声の大きさと口の開きは比例しない

口の開きが小さいと、大きな声は出ないと思っている人がたくさんいます。
これは大きな勘違いです。声の大きさと口の開きは比例しません。
ポイントはブレスコントロールです。

小さな口の開きでも、力強くバランスの取れた息を操れたら、立派な声が出ます。
むしろ大きな口を開けていると、立派な声を出すには相当な量の息が必要なので、良い声を出すのは難しくなります。
大きな口を開ければ開けるだけ、自分で難易度を上げてしまっているのです。

パフォーマンスとしての大きな口はあり

プロのミュージシャンがパフォーマンスの一環としてシャウトしたり、大きな口を開けることはあります。表現方法としては、大いに活用すべきです。
私もオペラの仕事で、舞台袖で歌う前に絶叫したことがあります。
そのあとすぐ歌わなければいけなかったのですが、正しい発声で叫んでいるので全く問題なく歌えました。
叫んだり大きな口を開けて声を出したあとに顎やのどの痛みを感じる人は、危険な発声で声を出しているので要注意です。

パフォーマンスとして大きな口を開けるにしても、活用できるようになるには訓練が必要となります。
見よう見まねでやることは、おすすめしません。
まずは小さい口の開きで練習して、少しずつ開ける範囲を広くしていきましょう。
くれぐれも無理はしないようにしてくださいね。

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