失敗を恐れない心

人前で話をしたり歌ったりするとき、極度の緊張に悩んでいる人は意外と多いもの。
他人からは落ち着いて見えるのに、本人は頭が真っ白になっていて、実力がうまく発揮できない。
このようなタイプの人は、仕事でもプライベートでもプレッシャーに弱い傾向があります。

緊張に悩む人のお話を詳しく聞かせていただくと、過度に失敗を恐れている心が見えてきます。
誰しもミスはしたくないと思うもの。でも失敗は、多くの学びをもたらしてくれるのです。
今回は音楽家としての経験から、失敗を恐れないマインドについて書いてみたいと思います。

失敗は成功への架け橋

失敗はいけないことだと思っているなら、まずはその考えを手放しましょう。
そして、上手くいかなかったことに気付いた自分を、褒めてあげましょう。
これは私がレッスンで、よくお話しすることです。

発声を整えていくときに大切なのは、自分の状態を自分で認識できることです。
自分の状態を認識するためには、体の感覚を研ぎ澄ます必要があります。
これが意外と難しい。でも何かが違うと自分で気付けたのなら、それは着実な進歩です。
違いに気付くことは、成長の兆しなのです。

人と比べていると苦しくなる

失敗が怖いとか、完璧じゃないと落ち着かないという人は、無意識のうちに自分と他者を比較している可能性があります。
レッスンにおいて、他者との比較は何の役にも立ちません。
唯一比べて良いのは、過去の自分と今の自分だけです。
他者との比較に苦しみ、演奏することを楽しめなくなった演奏家を何人も見てきました。
価値基準を他者に求めていては、幸せになれません。
大切なのは、自分がどうなりたいのかということです。

優等生のカラをやぶる

レッスンでは完璧を目指したい!上手になりたい!
そういった向上心は素晴らしいですし、応援したいと思います。
でも私のレッスンに来てくれる人には、「どんどん間違えて、失敗してください!」と伝えています。
失敗しろといっているのではありません。遠慮せずに、いろいろなことを試してほしいのです。
わからないことは、何度でも質問していいですし、同じ間違いだって、何度してもかまいません。
人は繰り返すことによって学習し、成長する生き物なのです。

トライ&エラーを楽しめ!

レッスンはまさに、トライ&エラーの繰り返しです。
私もレッスンを受ける側のときは、トライ&エラーを繰り返します。
その中で、自分にぴったりくる瞬間を見つけるのです。
見つけたときは、とてもワクワクします。

失敗も挑戦も、成長の喜びをもたらすエッセンスです。
できないことがあるからレッスンに行くのに、遠慮なんかしてたらもったいないと思いませんか?
何度も繰り返すうちに、少しずつレベルアップしていく自分に気付くでしょう。
私は受講生の方々と、一緒に成長を喜べる講師でありたい。
そう思える環境づくりを、L’atelier d’Yは目指しています。

メンタルは自分を許して強くなる

メンタルを強くしたいなら、自分を許して認めることです。
私はよく人から「メンタルが強い。鋼のメンタルを持っている」なんて言われますが、実際は逆です。私のメンタルは柔軟にできています。
たくさんの舞台経験がある私でも、前日に緊張から眠れなくなることもあります。
急に歌詞が飛んだらどうしようと、起きてもいない失敗が頭をよぎることもあります。
そんなとき私は、不安に思う心を認めてあげるのです。

ある日の本番当日。オーケストラもいる中で、最後のリハーサルをしました。
いままで一度も間違えたことがない独唱の部分を、私は間違えたんですね。
普通ならかなり焦るところだと思います。実際、私以外は慌てていました。
でも私は、確実に本番は問題なくこなせるという自信を持っていました。
なぜなら、一度間違えたことで、間違えるパターンを学習できたからです。
このとき、間違えたことを誤魔化したり、偶然間違えただけと思って放置したらどうでしょう?
舞台上で問題箇所が近づくたびに緊張は高まり、他の部分でもミスを連発したことでしょう。
もちろん本番の演奏は、一番良いものとなりました。

失敗を恐れないマインド

私の音楽家としての経験も交えながら、失敗を恐れないマインドについてお話ししてみました。
自分のウィークポイントを認めて、一緒に進んでいくことが上達・改善の近道です。
私は間違えたとき、「失敗しちゃう自分も、人間らしくて可愛いところがあるな」と思うようにしています。
同時に、改善の余地があることに喜びを感じます。
改善点があるということは、伸び代があるということ。
自分の成長を楽しみだと思えたら、失敗は怖いものではなくなりますよ。

TOP